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固定残業代の求人票の書き方|明示する3つ・ハローワーク・最低賃金・45時間

月給に一定時間分の残業代をあらかじめ含める「固定残業代(みなし残業)」。給与の総額を大きく見せられる一方で、書き方を間違えると、求人のルールに反するだけでなく、残業代を払ったと認められずに未払いの請求を受けるおそれもあります。介護施設でも、主任・リーダーや相談員、事務職の求人や、夜勤手当の払い方で関わることがあるテーマです。

この記事の結論

  • 固定残業代を含めて募集するときは、①固定残業代を除いた基本給の額 ②固定残業代が何時間分でいくらか ③その時間を超えた分は割増賃金を追加で払うことの3つを、求人票や募集要項で必ず示します。「業務手当」など名前が違っても同じです。求人広告で書ききれない場合も、面接など応募者と最初に接触するときまでには示します。
  • 深夜労働や休日労働の割増を定額で払う場合も、同じように書きます。
  • 固定残業代は残業に対して払う賃金なので、最低賃金の計算には入りません。固定残業代を除いた額で最低賃金以上かを確かめます。
  • 実際の残業代が固定残業代を上回ったら、差額を払う必要があります。時間数を決めた公式の基準はありませんが、時間外労働の上限は原則として月45時間です。実際の残業時間に近い時間数にしておくのが安全です。

以下では、求人票に書く3つのこと、ハローワークの求人票での書き方、最低賃金との関係、固定残業代が残業代の支払いとして認められるための考え方、時間数の決め方、夜勤手当との関係を、法令・厚生労働省の資料・最高裁判例をもとに整理します。

求人票に書かなければならない3つのこと

職業安定法に基づく指針は、一定時間分の時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金を定額で払う仕組みを採るときは、名称にかかわらず、次の内容を明示するよう定めています。厚生労働省のリーフレットも、この3つをすべて明示するよう求めています。

  1. 固定残業代を除いた基本給の額
  2. 固定残業代に関する労働時間数と金額などの計算方法(何時間分で、いくらか)
  3. 固定残業時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働に対して、割増賃金を追加で払うこと

このルールは、2015年10月に若者雇用促進法に基づく指針に入り、2018年1月からは職業安定法に基づく指針にも入りました。ハローワークの求人票に限らず、求人サイトや自施設のホームページで募集する場合も同じです。同じ指針は、固定残業代を含む賃金について「実際の賃金等よりも高額であるかのように表示してはならない」とも定めています。

指針は、労働条件の明示は原則として応募者と最初に接触する時点(面接など)までに行い、固定残業代の明示には特に留意するよう定めています。求人サイトなどの広告にも、これらの事項をできる限り含めることが望ましいとされています。広告の文字数が足りない場合は、「詳細は面談時にお伝えします」などと書いたうえで別途明示することもできますが、最初に接触するときまでには3つとも示す必要があります。

厚生労働省のリーフレットの記載例(時間外労働の場合)
① 基本給(××円)(②の手当を除く額)
② □□手当(時間外労働の有無にかかわらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給)
③ ○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給

「□□」には固定残業代にあたる手当の名前を書きます。1つの手当に固定残業代と別の手当が混ざっている場合は、固定残業代の分を分けて書くようリーフレットは注意しています。

次のような書き方は、3つのうちどれかが欠けています。

  • 「月給〇〇万円(みなし残業代を含む)」だけ:基本給の額も、何時間分でいくらかも分からない
  • 「固定残業代 〇万円」だけ:何時間分か、超えた分を払うかが分からない
  • 「固定残業20時間分を含む」だけ:金額と、固定残業代を除いた基本給が分からない

出典:職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者…等が均等待遇、労働条件等の明示…等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号)第三の一の(三)ハ・(四)イ、第四の一・二の(三)/厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」(リーフレット・令和4年9月)/厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」(2018年1月1日施行分)/厚生労働省「求人企業の皆様へ」(リーフレット) 指針を見る リーフレットを見る 2018年のリーフレットを見る 求人企業向けリーフレットを見る

介護施設の求人での書き方の例

リーフレットの形に沿って、介護施設の生活相談員の求人で書くとすると、たとえば次のようになります(金額は〇〇で伏せています。実際には、後で説明する最低賃金を下回らないか確かめてください)。

記入例(生活相談員・正職員)
月給 〇〇〇,〇〇〇円
① 基本給 〇〇〇,〇〇〇円(②の手当を除く額)
② 業務手当 〇〇,〇〇〇円(時間外労働の有無にかかわらず、10時間分の時間外手当として支給)
③ 10時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給

ハローワークの求人票での書き方

ハローワークの求人申込みでは、賃金の欄に「固定残業代(c)」という専用の欄があります。「求人情報の入力のしかた」では、次のように書くよう案内されています。

  • 固定残業代の仕組みを採っているかを選び、「あり」なら固定残業代の額を入れる
  • 「固定残業代に関する特記事項」に、時間外労働の有無にかかわらず固定的に支給することと、超過分は法定どおり追加で支給することを必ず書く
  • 基本給に固定残業代が含まれている場合は、その分を抜き出して「固定残業代(c)」に入れる
  • 固定残業代は「定額的に支払われる手当(b)」ではなく、「固定残業代(c)」に入れる

特記事項の入力例(ハローワーク)
時間外手当は時間外労働の有無にかかわらず、固定残業代として支給し、○時間を超える時間外労働は法定どおり追加で支給。

何時間分かを入れる専用の欄はないため、入力例のように時間数は特記事項に書きます。なお、ハローワークの「入力のしかた」は固定残業代を時間外労働の割増賃金として説明していて、深夜労働や休日労働の割増を定額で払う場合の専用の欄はありません。その場合も3つの内容を示す必要があるので(リーフレット)、どの欄にどう書くかは、求人を出すハローワークに確かめてください。

出典:厚生労働省・ハローワーク「求人情報の入力のしかた」(PL080323首01)/厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」(令和4年9月) 入力のしかたを見る リーフレットを見る

最低賃金は、固定残業代を除いた額で確かめる

最低賃金法施行規則は、所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金を、最低賃金の計算に入れないと定めています。固定残業代は時間外労働などの割増賃金にあたるため、最低賃金以上かどうかは、固定残業代を除いた基本給などで確かめます。

月給の場合は、月給(最低賃金の計算に入る分)÷ 1か月の平均所定労働時間で時間額を出し、地域の最低賃金と比べます。総額が高く見えても、固定残業代を除くと最低賃金を下回ってしまうことがあります。ハローワーク木場(東京労働局)も、「特に『固定残業代』を適用している場合に最低賃金を下回る求人が見受けられます」と案内しています。

計算に入らない手当や、年間休日から1か月の平均所定労働時間を出す方法は、最低賃金の改定で求人票を見直すポイントで計算例つきで説明しています。

出典:最低賃金法施行規則 第1条第2項/厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」/東京労働局・ハローワーク木場「最低賃金の改正について」 最低賃金法施行規則を見る 確認する方法を見る ハローワーク木場の案内を見る

固定残業代が「残業代の支払い」と認められるために

固定残業代は、払っていれば必ず残業代を払ったことになるわけではありません。最高裁は、割増賃金を基本給や手当にあらかじめ含めて払う方法について、次のような考え方を示しています。

  • 通常の労働時間の賃金にあたる部分と、割増賃金にあたる部分とを判別できることが必要(テックジャパン事件 平成24年3月8日、医療法人社団康心会事件 平成29年7月7日)
  • 手当が割増賃金として認められるには、時間外労働などの対価として払われるものとされている必要があり、契約書などの書き方だけでなく、使用者の説明の内容や、実際の労働時間などの事情も考えて判断する(日本ケミカル事件 平成30年7月19日)
  • 賃金体系全体の中での手当の位置づけにも注意して判断する(国際自動車事件 令和2年3月30日)。それまで払っていた賃金の名目だけを割増賃金に置き換えたような体系では、判別できないとされた例もある(熊本総合運輸事件 令和5年3月10日)

康心会事件の判決を受けて、厚生労働省は都道府県労働局に、監督指導で次の点を確認するよう通知しています。

  • 割増賃金にあたる部分について、相当する時間数や金額を書面などで示し、通常の賃金にあたる部分と明確に区別できるようにしているか
  • 割増賃金にあたる部分の金額が、実際の時間外労働などに応じた割増賃金の額を下回るときは、その差額を所定の賃金支払日に追加して払う必要があること。そのために、労働時間を適正に把握しているか

求人票だけでなく、労働条件通知書や賃金規程にも同じ内訳を書き、実際の残業時間を毎月把握しておくことが前提になります。

出典:最高裁判所 平成24年3月8日第一小法廷判決(平成21(受)1186)/平成29年7月7日第二小法廷判決(平成28(受)222)/平成30年7月19日第一小法廷判決(平成29(受)842)/令和2年3月30日第一小法廷判決(平成30(受)908)/令和5年3月10日第二小法廷判決(令和4(受)1019)/厚生労働省「時間外労働等に対する割増賃金の適切な支払いのための留意事項について」(平成29年7月31日 基監発0731第1号) 平成24年判決を見る 平成29年判決を見る 平成30年判決を見る 令和2年判決を見る 令和5年判決を見る 通知を見る

何時間分にする?「45時間」の考え方

固定残業時間を何時間にすべきかを定めた公式の基準は、見当たりませんでした。ただし、労働基準法は時間外労働の上限を、原則として月45時間・年360時間としています(36協定で定める限度時間。3か月を超える1年単位の変形労働時間制では月42時間・年320時間)。臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできません。

固定残業時間を多く設定すると、毎月それだけ残業がある職場だと受け取られやすくなります。また、日本ケミカル事件の最高裁判決は、手当が残業の対価かを判断するときに実際の労働時間などの事情も考えるとしており、この事件では手当が約28時間分の時間外労働に相当し、実際の時間外労働と大きくかけ離れていないことも考慮されました。熊本総合運輸事件の最高裁判決も、「実際の勤務状況に照らして想定し難い程度の長時間の時間外労働等を見込んだ過大な割増賃金」が払われる賃金体系になっていたことを、判断の事情の一つに挙げています。固定残業時間は、実際の残業時間に近い時間数で設定し、超えた分は毎月きちんと追加で払うのが安全です。

出典:労働基準法 第36条第4項/厚生労働省「時間外労働の上限規制」/最高裁判所 平成30年7月19日第一小法廷判決(平成29(受)842)/令和5年3月10日第二小法廷判決(令和4(受)1019) 労働基準法を見る 上限規制を見る 平成30年判決を見る 令和5年判決を見る

介護施設の夜勤手当を、深夜割増の定額払いにする場合

介護施設では、夜勤手当の中に深夜労働(午後10時から午前5時)の割増賃金を含めて、定額で払っていることがあります。これも深夜労働の割増を定額で払う仕組みにあたるため、リーフレットのとおり、「深夜労働や休日労働について固定残業代制を採用する場合も、同様の記載が必要」です。

  • 夜勤手当のうち、深夜割増にあたる部分がいくらで、何時間分かを示す
  • 実際に計算した深夜割増がそれを上回れば、差額を追加で払うことを書く

熊本労働局の医療機関向けの資料(2014年)も、「夜勤手当として1回5,000円を払っているので、深夜労働の割増賃金は払っていない」という質問に、「実際に計算した深夜労働割増賃金が5,000円を上回る場合は、その差額を支給しなくてはなりません」と答えています。夜勤手当と最低賃金の関係、深夜の時給の下限(最低賃金の1.25倍)は、夜勤の最低賃金の記事で都道府県別にまとめています。

出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」(令和4年9月)/熊本労働局「労働基準法のポイント(医療機関等)」Q17(2014年) リーフレットを見る 熊本労働局の資料を見る

書き方を間違えると

  • 3つのうちどれかが欠けているなど、明示が不十分な場合も、行政指導や改善命令、勧告、企業名の公表、罰則などの対象となる場合があります(厚生労働省のリーフレット。職業安定法 第48条の2・第48条の3)。
  • 職業安定法は、求人の情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁じています(第5条の4)。虚偽の広告や虚偽の条件で募集した場合や、虚偽の条件でハローワークなどに求人を申し込んだ場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(第65条第9号・第10号)。
  • ハローワークは、労働条件が明示されていない求人の申込みを受理しないことができます(第5条の6)。
  • 固定残業代が残業代の支払いと認められなければ、固定残業代とは別に時間外労働などの割増賃金を全額払うことになりかねません(上の最高裁判決)。

出典:職業安定法 第5条の4・第5条の6・第48条の2・第48条の3・第65条/厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」(2018年1月1日施行分) 職業安定法を見る リーフレットを見る

まとめ:載せる前のチェックポイント

  • 固定残業代を除いた基本給の額を書いたか
  • 固定残業代が何時間分で、いくらかを書いたか(手当の名前が違っても同じ)
  • その時間を超えた分は割増賃金を追加で払うと書いたか
  • 深夜・休日の割増も定額で払うなら、それも同じように書いたか(夜勤手当を含む)
  • 固定残業代を除いた額で、最低賃金以上になっているか
  • 固定残業時間が実際の残業時間とかけ離れていないか、超えた分を毎月払える仕組みになっているか
  • 労働条件通知書や賃金規程にも、同じ内訳が書かれているか

固定残業代は、内訳まで正確に書けば、応募する人にとっても給与の中身が分かりやすくなります。求人票の書き方全体は介護の求人票の書き方でまとめています。

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