介護施設の求人では「試用期間3か月」と書くのが一般的です。ただ、試用期間中だけ時給を下げる、夜勤に入らない、といった条件の違いをどこまで書くか、労働条件通知書にも書く必要があるのかで迷う場面は少なくありません。
この記事の結論
- 求人票(募集の段階)には、試用期間の有無と期間を書く必要があります。2018年1月から職業安定法施行規則で決まっているルールです。
- 試用期間中の賃金や業務などが本採用後と違う場合は、試用期間中と本採用後の両方の条件を書きます。ハローワークの求人票では「試用期間中の労働条件」を「異なる」にして、内容を書きます。
- 試用期間中の賃金も最低賃金以上が必要です。下回ってよいのは、都道府県労働局長の許可を受けた場合だけです(減額は最大20%・期間は最長6か月)。
- 試用期間中も、加入の要件を満たしていれば社会保険・雇用保険は入社日から加入します。入社から14日を超えたら、本採用を見送るときも解雇予告が必要です。
以下では、求人票と労働条件通知書それぞれでの書き方、ハローワークの介護の記入例、試用期間中の賃金と最低賃金、本採用を見送るときのルール、社会保険と有給休暇の扱いを、法令と厚生労働省・ハローワークの資料をもとに整理します。
求人票には「有無・期間・期間中の条件」を書く
2018年1月1日から、職業安定法施行規則の改正により、労働者を募集するときに示す労働条件に「試みの使用期間に関する事項」が加わりました。厚生労働省の取扱要領では、明示する内容は試用期間の有無と、試用期間があるときはその期間とされています。
また、試用期間中の業務の内容や賃金などの条件が、試用期間が終わった後と違う場合は、それぞれの条件を示さなければならないとされています。試用期間と本採用が1つの労働契約でも同じです。厚生労働省のリーフレットでは、次のような書き方が示されています。
厚生労働省のリーフレット(2024年版)の記載例
試用期間:試用期間あり(3か月)
賃金:月給25万円(ただし、試用期間中は月給20万円)
このルールは、ハローワークの求人票だけでなく、求人サイトへの掲載や自施設のホームページでの募集にも同じように当てはまります。
出典:職業安定法施行規則 第4条の2第3項第2号の2・第6項/厚生労働省「募集・求人業務取扱要領」(令和7年6月)/厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」(2018年)/厚生労働省「2024年4月から、労働者の募集や職業紹介事業者への求人の申込みの際、明示しなければならない労働条件が追加されます」 職業安定法施行規則を見る 取扱要領を見る 2018年のリーフレットを見る 2024年のリーフレットを見る
試用期間を「有期契約」にするなら、その条件を書く
「最初の6か月は契約社員で、問題がなければ正職員に」のように、試用期間の代わりに期間の定めのある契約を結ぶ場合は、職業安定法の指針により、本採用後の条件ではなく、その有期契約の期間中の条件を示します。正職員の条件だけを書いて、実際には有期契約から始める募集にならないよう注意してください。
ハローワークの求人票では、雇用期間を「定めあり」にして契約更新の可能性を書き、正職員への登用は「正社員登用」の欄(登用の有無と過去3年間の登用実績)に書きます。期間が終われば自動的に契約を終わらせられるとは限らない点は、後の「試用期間の長さと、有期契約で様子を見る場合」で説明します。
出典:職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者…等が均等待遇、労働条件等の明示…等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号)第三の一の(三)ニ/厚生労働省・ハローワーク「求人申込書の書き方」(【正社員登用】) 指針を見る 求人申込書の書き方を見る
ハローワークの求人票での書き方
ハローワークの求人申込書には、試用期間について次の3つの欄があります。
- 試用期間:「あり」か「なし」を選び、「あり」の場合はその期間を書く
- 試用期間中の労働条件:本採用後と「同条件」か「異なる」かを選ぶ
- 試用期間中の労働条件の内容:「異なる」の場合に、試用期間中の条件をできる限り詳しく書く
ハローワークの「求人申込書の書き方」の記入例は、グループホームで働く介護福祉士の求人で、試用期間「あり」・期間「3ヶ月」・試用期間中の労働条件「同条件」となっています。条件が変わらないなら「同条件」を選ぶだけで足ります。
条件が変わる場合は、「異なる」を選び、何がどう変わるのかを具体的に書きます。この欄は文字数に上限があるので(大阪労働局の記入例では最大60文字)、短くまとめます。介護施設でよくある違いに当てはめると、次のような書き方になります(金額は自施設の額に置き換えてください)。
書き方の例:試用期間中の労働条件が異なる場合
試用期間:あり(3か月)
試用期間中の労働条件:異なる
内容:月給〇〇円(本採用後△△円)。日勤のみ、夜勤は本採用後から月4回程度
賃金だけでなく、夜勤の有無や勤務時間、手当の扱いが変わる場合もここに書いておくと、入職後に「聞いていた条件と違う」という行き違いを防げます。
出典:厚生労働省・ハローワーク「求人申込書の書き方」(記入例・【試用期間】の説明)/大阪労働局(大阪のハローワーク)による求人申込書の記入例(「試用期間中の労働条件の内容(異なる場合に記入)(最大60文字)」) 求人申込書の書き方を見る 大阪労働局の記入例を見る
労働条件通知書には何を書く?
採用時に渡す労働条件通知書(労働基準法 第15条)では、書面で明示しなければならない事項として、試用期間そのものは挙げられていません(労働基準法施行規則 第5条)。厚生労働省のモデル労働条件通知書(2026年10月からの様式)にも、試用期間の専用の欄はありません。
ただし、賃金や労働時間は書面で明示しなければならない事項です。試用期間中だけ賃金や勤務時間が違うなら、試用期間中と本採用後の両方の条件を書いておくのが確実です。モデル労働条件通知書を使う場合は、金額が2か所に分かれないよう、賃金は賃金の欄にまとめて書き、試用期間そのものは「その他」の欄などに書く形が考えられます(モデル様式は、そのとおりの形にする必要はないとされています)。
書き方の例:労働条件通知書
賃金の欄:基本給 月給△△円(ただし、試用期間中は月給〇〇円)
その他の欄:試用期間あり(入社日から3か月)
試用期間中に本採用を見送ることがあるなら、それは退職(解雇)に関する事項にあたり、これも書面で明示する事項です。モデル労働条件通知書の「解雇の事由及び手続」は就業規則の条番号で示す形になっているので、試用期間中の解雇を定めた条も含めておきましょう。
また、求人票で示した条件と違う条件で労働契約を結ぶときは、契約を結ぶ前に、変更する内容を本人に示す必要があります(職業安定法 第5条の3第3項)。試用期間の長さや試用期間中の賃金を面接のあとで変えた場合も同じです。
試用期間の長さや、試用期間中に本採用を見送ることがある場合の決まりは、就業規則にも書いておきます。厚生労働省のモデル就業規則には、試用期間の条文の例があります。
出典:労働基準法 第15条/労働基準法施行規則 第5条第1項/厚生労働省「モデル労働条件通知書」(一般労働者用・2026年10月〜)/職業安定法 第5条の3第3項/厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)第6条 労働基準法施行規則を見る モデル労働条件通知書を見る 職業安定法を見る モデル就業規則を見る
試用期間中の賃金も最低賃金以上に
試用期間中に賃金を下げること自体はできますが、下げたあとの金額も最低賃金以上である必要があります。最低賃金を下回ってよいのは、使用者が都道府県労働局長の許可(最低賃金の減額の特例)を受けた場合だけです。
- 申請:「試の使用期間中の者の最低賃金の減額の特例許可申請書」(様式第2号)を、労働基準監督署を通じて都道府県労働局長に出します
- 減額の上限:最低賃金の20%まで。その範囲で、職務の内容・成果・労働能力・経験などを考えて決めます
- 期間:業種・職種の実情からみて必要な期間に限られ、最長6か月です
- 対象になる期間:本採用するかどうかを判断するための試験的な期間で、就業規則や労働契約などで定められているもの(名称は問われません)
許可を受けずに、試用期間中だけ最低賃金を下回る時給にすることはできません。また、許可が必要と認められるのは、その地域で同じ業種・職種の本採用者の賃金が最低賃金と同じくらいの水準である場合などに限られます。実際にほとんど使われていない制度で、厚生労働省の資料では、平成24年に試用期間中の人について減額の特例を申請・許可した件数は、どちらも0件でした。試用期間中の賃金は、減額の特例を前提にせず、最低賃金以上で決めるのが現実的です。最低賃金は毎年秋に改定され、都道府県ごとに発効日が違うので、前の年の最低賃金に合わせて決めた試用期間中の金額が、そのまま残っていないかも確かめておきましょう。
出典:最低賃金法 第7条第2号/最低賃金法施行規則 第4条・第5条/厚生労働省 通達「最低賃金法の減額の特例許可基準について」(昭和34年10月28日基発第747号)/厚生労働省 通達「最低賃金法第7条の減額の特例許可事務マニュアルの作成について」(平成20年7月1日基勤勤発第0701002号)/厚生労働省「最低賃金の減額の特例許可申請書(様式第2号)」/厚生労働省の資料(最低賃金の減額特例の申請・許可件数) 最低賃金法を見る 最低賃金法施行規則を見る 許可基準を見る 事務マニュアルを見る 申請書の様式を見る 件数の資料を見る
本採用を見送るときのルール
入社から14日を超えたら解雇予告が必要
労働者を解雇するときは、原則として30日以上前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払う必要があります。試用期間中の人は、この予告の規定が適用されない対象に入っていますが、14日を超えて引き続き使用された場合は、通常どおり予告が必要になります(労働基準法 第21条)。
「試用期間中は予告なしでいつでも辞めてもらえる」わけではありません。予告がいらないのは入社から14日以内だけで、3か月の試用期間なら、残りの期間は通常の解雇と同じ手続きになります。
出典:労働基準法 第20条・第21条/厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A(解雇予告の例外)/厚生労働省「モデル就業規則」第6条の解説 労働基準法を見る Q&Aを見る モデル就業規則を見る
解雇予告とは別に、本採用を見送るには合理的な理由が必要
予告の手続きとは別に、本採用を見送ること(解雇)そのものが認められるかどうかの問題があります。最高裁は、試用期間中の本採用拒否について、通常の解雇より広い範囲で認められるとしつつ、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合にだけ許されると判断しています(三菱樹脂事件)。これは入社から14日以内かどうかに関係なく当てはまります。14日の例外は予告という手続きの話で、解雇が有効かどうかは別の問題です。
労働契約法 第16条でも、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされています。本採用を見送る可能性があるなら、どんな場合に見送るのかを就業規則に書き、試用期間中の指導や面談の記録を残しておくことが大切です。
出典:最高裁判所 昭和48年12月12日 大法廷判決(昭和43(オ)第932号・三菱樹脂事件)/労働契約法 第16条 判決を見る 労働契約法を見る
試用期間の長さと、有期契約で様子を見る場合
試用期間の長さを決めた法律の定めはありません。ただし、厚生労働省のモデル就業規則の解説では、労働者の地位を不安定にすることから、あまりに長い期間を試用期間とすることは好ましくないとされています。裁判例でも、適性を判断するのに必要な合理的な期間を超えた長期の試用期間は、公序良俗に反し、その限りで無効とされたものがあります。
また、「1年契約で働いてもらい、様子を見て正職員に」という形をとる場合も注意が必要です。最高裁は、働く人の適性を見るために期間を定めた場合、期間の満了で契約が当然に終わるという明確な合意がない限り、その期間は契約の期間ではなく試用期間と考えるのが相当だとしています(神戸弘陵学園事件)。期間が終われば自動的に契約を終わらせられるとは限りません。
出典:厚生労働省「モデル就業規則」第6条の解説/厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例「試用期間」/最高裁判所 平成2年6月5日 第三小法廷判決(平成元(オ)第854号・神戸弘陵学園事件) モデル就業規則を見る 裁判例を見る 判決を見る
試用期間中も社会保険・雇用保険・有給休暇は同じ
- 健康保険・厚生年金:試用期間中でも報酬が支払われる場合は使用関係が認められ、加入の要件を満たしていれば入社日から加入します。日本年金機構は、資格取得日を試用期間の終了日で届け出るのは誤りの事例として挙げ、4月1日に試用期間として入社し7月1日に正社員になった場合の資格取得日は4月1日としています。「本採用になってから加入」とはできません。
- 雇用保険:本採用が決まる前の試用期間中でも、雇用関係があり、加入の要件を満たして働いていれば被保険者になります。資格取得届には、試用期間として働いた最初の日を書きます。
- 年次有給休暇:労働基準法では「雇入れの日から起算して6か月間継続勤務」で付与されます。数え始めは法律上「雇入れの日」で、継続勤務とは在籍期間のことなので、試用期間中も在籍している以上、雇入れの日から数えます。モデル就業規則の条文の例にも「試用期間は、勤続年数に通算する」とあります。
出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」/日本年金機構「届出にあたって『もれ』や『誤り』が多い事例」(平成23年12月。「資格取得年月日は試用期間等も含めた当初の年月日」)/厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き」/労働基準法 第39条/厚生労働省「スタートアップ労働条件」Q&A(年次有給休暇)/厚生労働省「モデル就業規則」第6条 日本年金機構のページを見る 日本年金機構の資料を見る 雇用保険の手引きを見る Q&Aを見る
試用期間のチェックポイント
- 求人票・求人サイト・自施設の採用ページに、試用期間の有無と期間を書いているか
- 試用期間中に賃金・夜勤・勤務時間などが変わるなら、試用期間中と本採用後の両方の条件を書いているか
- 試用期間中の賃金が、今年度の最低賃金以上になっているか
- 有期契約から始めるなら、正職員の条件ではなく有期契約の期間中の条件を書いているか
- 労働条件通知書に、試用期間と試用期間中の条件を書いているか(面接後に変えた条件は、契約前に本人に示しているか)
- 就業規則に、試用期間の長さと本採用を見送る場合の決まりがあるか
- 試用期間中の職員も、社会保険・雇用保険に入社日から加入しているか
まとめ
試用期間は、求人票では「有無・期間・期間中の条件」の3点を書く項目です。試用期間中だけ条件が変わるなら、試用期間中と本採用後の両方を具体的に書き、労働条件通知書にも同じ内容を書いておきましょう。求人票全体の書き方は介護の求人票の書き方、最低賃金の確かめ方は最低賃金の改定で求人票を見直すポイント、パートの労働条件通知書はパートの労働条件通知書の書き方と記入例の記事でまとめています。判断に迷う場合は、管轄のハローワークや労働基準監督署(社会保険は年金事務所)に確認してください。