ハローワークの求人申込書や求人サイトの入力画面にある「受動喫煙対策」の欄。「うちは屋内禁煙でいいのか、敷地内禁煙と書くべきか」「入居者が居室でたばこを吸う場合はどう書くのか」で迷う介護施設は少なくありません。介護施設は、施設の種類によって法律上の区分が違い、書き方も変わります。
この記事の結論
- 2020年4月から、ハローワークへの求人の申し込みでも、求人サイトや自施設の採用ページでの募集でも、就業場所の受動喫煙を防止するための措置を明示することが義務になっています。
- 書き方は、健康増進法の施設の区分で決まります。介護老人保健施設・介護医療院は「第一種施設」で敷地内禁煙、特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・デイサービスなどは「第二種施設」で原則屋内禁煙(基準を満たす喫煙専用室などは設置できる)です。
- ハローワークの求人票では「有無」「対策」「特記事項」の3つの欄で示します。たとえば敷地内禁煙の老健なら「あり/屋内禁煙/敷地内禁煙」、屋内禁煙の特養なら「あり/屋内禁煙」です。
- 喫煙専用室など法律の規制の対象になる喫煙室で働く場面(入居者の喫煙の付き添いや清掃など)がある求人は、20歳未満の人を立ち入らせられないため、年齢の下限を20歳以上とする年齢制限が必要になります。入居者の個室や訪問先など、規制の対象外の場所での業務はこれに当たりません。
以下では、明示の義務、介護施設の区分、ハローワークの求人票の書き方と記載例、居室や訪問先など迷いやすい場面、求人サイトでの書き方を、法令と厚生労働省・ハローワークの資料をもとに整理します。情報は2026年11月4日時点のものです。
受動喫煙対策の明示は、求人を出すときの義務
職業安定法施行規則の改正により、2020年4月1日から、労働者の募集や求人の申し込みを行う際に「就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項」を明示することが義務になりました。業務の内容や賃金、労働時間などと並ぶ、求人で必ず示す項目のひとつです。ハローワークでは、2020年1月6日以降の求人の申し込みから、求人票の様式を変えて明示を求めています。
求人サイトや自施設の採用ページで募集する場合も同じです。職業安定法第5条の3は、労働者の募集を行う者に対しても、応募しようとする人に労働条件を明示するよう求めています。
出典:職業安定法 第5条の3/職業安定法施行規則 第4条の2第3項第9号/厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「『受動喫煙防止』のための取組を明示してください」 職業安定法を見る 施行規則を見る リーフレットを見る
介護施設は種類で区分が分かれる
求人票に書く内容は、改正健康増進法の施設の区分で決まります。区分は、子どもや患者など受動喫煙による健康への影響が大きい人が主に利用する施設を「第一種施設」、それ以外の事業所などを「第二種施設」とする分け方です。介護施設でいうと、次のようになります。
| 区分 | 原則と施設の例 |
|---|---|
| 第一種施設 | 敷地内禁煙 介護老人保健施設、介護医療院 (病院・診療所も同じ) |
| 第二種施設 | 原則屋内禁煙 特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、 グループホーム、デイサービス、 訪問介護の事業所など |
健康増進法施行令は、第一種施設として学校や病院・診療所と並べて介護老人保健施設と介護医療院を挙げています。特別養護老人ホームや有料老人ホーム、デイサービスなどはこの一覧に入っていないため、2人以上の人が利用する施設として第二種施設にあたります。
- 第一種施設(2019年7月から):建物の中だけでなく、敷地内も禁煙です。屋外に喫煙場所を設けられるのは、喫煙場所を区画し、喫煙場所であることを示す標識を掲げ、建物の裏や屋上など施設を利用する人が通常立ち入らない場所に置く、といった措置をとった場合だけです(特定屋外喫煙場所)。
- 第二種施設(2020年4月から):屋内は原則禁煙です。屋内で喫煙できるのは、煙が外に漏れない基準を満たした喫煙専用室や加熱式たばこ専用喫煙室などに限られます。
なお、保育所などの児童福祉の施設も第一種施設で、施行令の一覧には認可外の保育施設も含まれています。職員向けの保育所を併設している場合は、その部分の扱いに注意が必要です。厚生労働省のQ&Aは、事業所の一部を「事業所内保育事業」に使っている場合、第一種施設になるのはその一部の場所だけ(事業所全体ではない)と説明しています。
出典:健康増進法 第28条・第29条・第33条/健康増進法施行令 第3条/厚生労働省健康局長通知「『健康増進法の一部を改正する法律』の施行について(受動喫煙対策)」(平成31年2月22日 健発0222第1号)/厚生労働省「改正健康増進法の施行に関するQ&A」問2-3 健康増進法を見る 施行令を見る 通知を見る Q&Aを見る
ハローワークの求人票の書き方
ハローワークの求人票では、受動喫煙対策を「有無」「対策」「特記事項」の3つの欄で示します。厚生労働省・労働局・ハローワークのリーフレットでは、施設の区分ごとに次の書き方が示されています。
- 第一種施設で敷地内禁煙:有無「あり」、対策「屋内禁煙」、特記事項に「敷地内禁煙」など
- 第一種施設で、敷地内に特定屋外喫煙場所を設けている:有無「あり」、対策「屋内禁煙」、特記事項に「敷地内禁煙(屋外に喫煙場所設置)」など
- 第二種施設で屋内禁煙:有無「あり」、対策「屋内禁煙」、特記事項は空欄
- 第二種施設で、喫煙専用室または加熱式たばこ専用喫煙室を設けている:有無「あり」、対策「喫煙室設置」、特記事項に、設けている部屋に合わせて「喫煙専用室設置」または「加熱式たばこ専用喫煙室設置」など
- 第二種施設で、法律の規制が適用されない場所(例:宿泊室内など)がある:有無「あり」、対策「喫煙室設置」、特記事項に「喫煙可の宿泊室あり」など
このほか、禁煙の区域と喫煙できる区域の両方がある場合は、喫煙できる区域での業務があるかどうかを、できる限り特記事項に書くよう求められています。記載例は「喫煙可能区域での業務あり」「喫煙可能区域での業務なし」です。
リーフレットで有無を「なし(喫煙可)」とする例として挙がっているのは、経過措置の対象となる小規模な既存の飲食店や、喫煙を主な目的とするバーなどで、店内の全部で喫煙できる場合です。介護施設の求人で「なし(喫煙可)」を選ぶ場面は、基本的にありません。
出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「『受動喫煙防止』のための取組を明示してください」 リーフレットを見る
介護施設の記載例
上のリーフレットの書き方を、介護施設のよくある状況に当てはめると次のようになります。
- 例1:介護老人保健施設で、敷地内を全面禁煙にしている
有無:あり/対策:屋内禁煙
特記事項:敷地内禁煙 - 例2:介護老人保健施設で、区画・標識などの要件を満たした特定屋外喫煙場所を建物の裏に設けている
有無:あり/対策:屋内禁煙
特記事項:敷地内禁煙(屋外に喫煙場所設置) - 例3:特別養護老人ホームで、建物の中に喫煙場所がない
有無:あり/対策:屋内禁煙
特記事項:(記入なし) - 例4:有料老人ホームで、喫煙専用室を設けている
有無:あり/対策:喫煙室設置
特記事項:喫煙専用室設置、喫煙可能区域での業務なし
第一種施設は敷地内禁煙が原則で、厚生労働省の通知は、屋外に喫煙場所を設けられる仕組みがあるからといって、その設置を推奨するものではないとしています。例2は、要件を満たした喫煙場所をすでに設けている場合の書き方です。
第二種施設でも、敷地内を全面禁煙にしている場合は、特記事項に「敷地内禁煙」と書いておくと応募する人に伝わります。実際の運用と違う内容にならないよう、書く前に施設の喫煙場所の状況を確かめておきましょう。
出典:厚生労働省健康局長通知「『健康増進法の一部を改正する法律』の施行について(受動喫煙対策)」(平成31年2月22日 健発0222第1号)第2の2 通知を見る
迷いやすい場面
入居者の個室(居室)で喫煙できる場合
健康増進法は、人が住むための場所(人の居住の用に供する場所)には規制を適用しないとしています。厚生労働省の通知では、これに当たる場所として、家庭や職員寮の個室とあわせて「特別養護老人ホーム・有料老人ホームなど入所施設の個室」が挙げられています。一方で、多床室・相部屋や共用部分は、規制の対象外にはならず、原則屋内禁煙です。また、規制の対象外の場所でも、施設の管理者は望まない受動喫煙を防ぐ措置をとるよう努めなければならないとされています。
入居者が個室で喫煙できる施設の求人は、リーフレットの「法律の規制が適用されない場所がある場合」に当てはめると、有無「あり」、対策「喫煙室設置」、特記事項に「喫煙可の居室あり」などと書く形になります。禁煙の区域と喫煙できる区域の両方がある場合にあたるので、喫煙できる居室での介助などの業務があるかどうかも、できる限り特記事項に書くよう求められています。
ただし、介護老人保健施設・介護医療院の個室は、この扱いになりません。通知は、病院や介護老人保健施設、介護医療院の個室は治療を目的として利用するものであり、人の居住の用に供する場所には当たらないとしています。第一種施設の個室は、ほかの場所と同じく敷地内禁煙の対象です。
出典:健康増進法 第40条/厚生労働省健康局長通知「『健康増進法の一部を改正する法律』の施行について(受動喫煙対策)」(平成31年2月22日 健発0222第1号)第11の1・第11の3/厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「『受動喫煙防止』のための取組を明示してください」 健康増進法を見る 通知を見る リーフレットを見る
訪問介護など、利用者の自宅で働く場合
家庭の場所は、健康増進法の規制の対象外です。厚生労働省のQ&Aでも、プライベートな居住場所には法が強制力を持って踏み込むことがなじまないため、家庭の場所などを規制の対象外にしていると説明されています。
ハローワークの入力方法では、訪問を主とする営業員など移動を前提とした就業の場合、毎日立ち寄る事業所などを「就業場所」に入力するよう案内されています。訪問介護もこの考え方に当てはめると、就業場所は事業所(事務所)になるので、受動喫煙対策の欄には事業所の対策を書くことになります。利用者の自宅は施設の一部ではないため、入居施設の個室のように「喫煙室設置」として書く形には当たりません。利用者の自宅での受動喫煙について、公式の記載例は見当たりませんでした(2026年11月4日時点)。訪問先によって喫煙の環境がある場合は、特記事項に「訪問先(利用者宅)によっては受動喫煙の可能性あり」などと書いておくと、応募する人の判断材料になります。
なお、労働安全衛生法は、事業者に対し、労働者の受動喫煙を防止するため、事業者と事業場の実情に応じた適切な措置をとるよう努めることを求めています。健康増進法の対象外の場所で働く職員についても、訪問時の換気のお願いなど、できる範囲の対策を考えておきましょう。
出典:厚生労働省「改正健康増進法の施行に関するQ&A」問2-2/ハローワークインターネットサービス「求人情報の入力方法について」/労働安全衛生法 第68条の2 Q&Aを見る 入力方法を見る 労働安全衛生法を見る
就業場所が複数ある・事業所の所在地と違う場合
求人を申し込む事業所の所在地と実際の就業場所が違う場合は、実際の就業場所の対策を書きます。複数の場所で働くことが決まっている場合は、「受動喫煙対策に関する特記事項」欄や「就業場所に関する特記事項」欄を使って、それぞれの場所の対策を書きます。ただし、出張など立ち寄る可能性がある場所や、将来働く可能性がある場所まで、すべて書く必要はないとされています。
出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「『受動喫煙防止』のための取組を明示してください」 リーフレットを見る
喫煙室で働く求人は「20歳以上」の年齢制限が必要
健康増進法では、施設の管理者は喫煙専用室などの喫煙できる場所に20歳未満の人を立ち入らせてはならないとされています。厚生労働省の通知は、20歳未満の従業員を喫煙専用室に立ち入らせて業務をさせることも認められないとしており、Q&Aでは、清掃のために立ち入る場合も例外にならない(シフトや業務内容の工夫が必要)と説明されています。
そのため、喫煙専用室などで働く求人は、年齢制限の下限を20歳以上とする必要があります。これは、年齢制限が例外的に認められる事由のうち、法令の規定による年齢制限(労働施策総合推進法施行規則 第1条の3第1項第2号)に当たります。リーフレットの記載例は次のとおりです。
- 年齢制限:あり
- 年齢制限範囲:20歳以上~
- 年齢制限該当事由:法定の規定により年齢制限がある
- 年齢制限の理由:健康増進法により20歳未満立入禁止のため
実際の選択肢の表記は、求人を申し込むときのハローワークの入力画面に合わせてください。一方、入居者の個室や利用者の自宅など、健康増進法の規制の対象外の場所には、この20歳未満の立入禁止も適用されません。こうした場所での業務だけを理由に「法令の規定による年齢制限」を設けることはできないので、判断に迷う場合は管轄のハローワークに確認しましょう。
入居者の喫煙の付き添いや喫煙室の清掃を職員が担当している施設は、求人票の年齢欄と受動喫煙対策の欄が食い違っていないか確認しておきましょう。喫煙室に入る業務を一部の職員に限るなど、20歳未満の職員が立ち入らない分担にする方法もあります。年齢制限が認められるほかの例外は、求人の年齢制限は違法?の記事でまとめています。
出典:健康増進法 第33条・第40条/厚生労働省健康局長通知(平成31年2月22日 健発0222第1号)第3の2(3)・第11/厚生労働省「改正健康増進法の施行に関するQ&A」問4-5/厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「『受動喫煙防止』のための取組を明示してください」 健康増進法を見る 通知を見る Q&Aを見る リーフレットを見る
求人サイト・自施設の採用ページでの書き方
職業安定法の指針では、求人広告などで求人情報を出すときは、受動喫煙対策を含む明示事項をできる限り広告にも含めることが望ましいとされています。また、明示は原則として、面接など応募者と最初に接触する時点までに行うこととされています。
求人サイトに受動喫煙対策の専用の欄がない場合は、待遇や職場環境の欄に「受動喫煙対策:敷地内禁煙」「受動喫煙対策:屋内禁煙(喫煙専用室あり)」のように書いておくと伝わります。ハローワークの求人票と求人サイトの原稿で内容が食い違っていないかも、あわせて確かめておきましょう。
このほか、自治体が条例で受動喫煙の防止について独自のルールを定めている場合は、求人での明示も条例に合ったものにするよう求められています。求人票全体の書き方は、介護の求人票の書き方の記事でまとめています。
出典:「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者…等がその責務等に関して適切に対処するための指針」(平成11年労働省告示第141号)第三の一(四)・第四の一/厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「『受動喫煙防止』のための取組を明示してください」 指針を見る リーフレットを見る
まとめ:求人票を出す前のチェックポイント
- 自施設が第一種施設(介護老人保健施設・介護医療院など)か、第二種施設(特養・有料老人ホーム・デイサービスなど)かを確かめたか
- 求人票の「有無」「対策」「特記事項」が、実際の喫煙場所の状況と合っているか
- 就業場所が複数ある場合や、事業所の所在地と違う場合に、実際の就業場所の対策を書いたか
- 入居者が個室で喫煙できる、訪問先によって受動喫煙の可能性がある、などの状況を特記事項に書いたか
- 喫煙専用室など法律の規制の対象になる喫煙室での業務がある求人に、20歳以上の年齢制限を付けたか(個室や訪問先での業務だけなら付けない)
- 求人サイトや自施設の採用ページの原稿にも、同じ内容を書いたか
受動喫煙対策は、たばこを吸わない人にとって職場を選ぶ判断材料のひとつです。施設の状況をそのまま書いておけば、入職後の「聞いていなかった」も防げます。