「人材紹介を使えば採用は決まる。でも、1人ごとの手数料が重い」。介護施設の採用担当者さまから、よくうかがうお悩みです。
この記事では、まず公的な統計から介護職の紹介手数料の相場を確認し、そのうえで紹介をやめるのではなく、紹介に頼る割合を減らすための方法を整理します。
介護職の紹介手数料は、1人あたり約34万〜49万円
厚生労働省が公表している「職業紹介事業報告」の集計では、有料職業紹介で常用就職が1件決まったときの手数料(1件あたりの平均)は次のとおりです。
| 職種 | 令和 元年度 | 令和 2年度 | 令和 3年度 |
|---|---|---|---|
| 介護サービスの職業 | 34.2万円 | 48.6万円 | 42.0万円 |
| 看護師 | 65.1万円 | 59.7万円 | 57.2万円 |
| 保育士 | 54.1万円 | 54.4万円 | 53.7万円 |
出典:厚生労働省 職業安定局「職業紹介・労働者派遣について」(社会保障審議会 介護保険部会 第107回 資料1-3、令和5年7月10日)/元データは職業紹介事業報告 資料を見る
年度別に公表されている集計は、令和3年度が最新です。パートを含む全国の平均で見ても、介護職は1人採用するごとに、おおむね40万円前後が動いている計算です。
正規職員に限ると、金額はさらに上がります。独立行政法人福祉医療機構の2023年度の調査では、特別養護老人ホームが正規職員1名を紹介で採用したときの手数料は平均91.7万円で、回答した施設の98.6%が「手数料の水準が高い」と答えています。
出典:独立行政法人福祉医療機構「2023年度 特別養護老人ホームの人材確保に関する調査について」 資料を見る
紹介会社の手数料は「採用した方の年収の◯%」で決める形が一般的なため、給与水準が上がれば手数料も上がります。
手数料が「高い」と感じられる3つの理由
1. 介護報酬は公定価格で、採用コストを価格に上乗せできない
介護事業所の収入の中心は、国が決める介護報酬です。一般の企業のように、採用にかかった費用をサービスの値段に上乗せすることは、原則としてできません。採用費が増えた分は、そのまま利益を削ります。
2. 1施設あたりで見ると、年間の負担が大きい
独立行政法人福祉医療機構の2022年度の調査をもとにした資料では、特別養護老人ホームが1年間に人材紹介会社へ支払った手数料の総額は、1施設あたり354.5万円とされています。1人あたりは数十万円でも、年に何人も採用すれば施設全体では大きな額になります。
出典:規制改革推進会議 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ 提出資料「人材紹介サービスの課題事項等について」(令和5年4月14日)より、独立行政法人福祉医療機構の調査結果 資料を見る
3. 早く辞めてしまうと、費用だけが残る
紹介で入職した方が短期間で退職すると、採用にかけた費用を回収しきれません。多くの紹介会社には、一定期間内に退職した場合に手数料の一部を返す「返戻金」の決まりがありますが、期間や返金の割合は会社ごとに違います。
紹介会社と付き合うときに確認したい3つのこと
紹介会社は、急いで人を確保したいときや、資格・経験の条件が厳しい職種では心強い存在です。使うときは、契約の前に次の3点を確認しておくと安心です。
- 手数料率と、その計算のもとになる「年収」の範囲(賞与や手当を含むかどうか)
- 返戻金の条件(何か月以内の退職で、いくら戻るのか)
- 入職後のフォローがあるか(入職した方の定着まで紹介会社が関わってくれるか)
なお、職業紹介の手数料には、紹介会社が自社で料率を定めて届け出る「届出制手数料」のほかに、法令で上限が決められた「上限制手数料」(就職後6か月間に支払われる賃金の11.0%まで)もあります。実際には届出制手数料を選ぶ紹介会社が多いため、契約時に料率を書面で確認しておくことが大切です。
紹介に頼る割合を減らす3つの方法
紹介の手数料を下げる交渉には限りがあります。効果が大きいのは、求人を見て施設に直接応募してくれる方(自己応募)を増やすことです。自己応募で採用できた分だけ、紹介に頼る人数が減ります。
方法1. 求人票の「最初の数行」を書き直す
求人サイトで仕事を探している方は、一覧に並んだ求人の冒頭だけを見て、開くかどうかを決めています。冒頭が「介護職員募集。未経験歓迎。」のような決まり文句だけだと、ほかの施設との違いが伝わりません。
冒頭に入れたいのは、たとえば次のようなその施設にしかない具体的な情報です。
- 1日の流れ、夜勤の回数、入居者さまの人数とスタッフの人数
- 残業の実態、休みの取りやすさ(希望休の通り方など)
- 入職後の教育の進め方(誰が・何日くらいつくのか)
- 職場の雰囲気がわかる写真(スタッフの年代や、実際の居室・休憩室など)
応募が来ない求人は、条件が悪いのではなく、良いところが書かれていないだけ、ということが少なくありません。
方法2. 掲載費のかからない媒体を組み合わせる
ハローワークのほか、民間の求人サイトにも「掲載は無料で、採用が決まったときに費用がかかる」形のものがあります。1つの媒体に頼るのではなく、求職者が普段使っている媒体に複数掲載しておくことで、求人が目に触れる機会が増えます。媒体ごとに料金の形や得意な職種が違うため、掲載前に料金体系を確認しておきましょう。
方法3. 応募が来たら、その日のうちに連絡する
仕事を探している方は、複数の施設に同時に応募していることが珍しくありません。連絡が遅れると、その間に他の施設の面接が決まってしまいます。「応募が来たら当日中に連絡する」ことを決まりにして、担当者が不在のときに誰が対応するかまで決めておくと、せっかくの応募を取りこぼしにくくなります。
まとめ:紹介と自己応募を使い分ける
人材紹介は、急ぎの欠員補充や専門性の高い職種では頼りになる手段です。一方で、年間を通じた採用をすべて紹介に頼ると、手数料が経営を圧迫します。
通常の採用は自己応募で、急ぎや難しい職種は紹介で。この使い分けができると、採用の数を落とさずに採用費を抑えやすくなります。